企業テックブログ運用ノウハウ

テックブログは開発組織を抱える企業にとってデフォルトに近い存在として運用されています。その一方で、記事掲載の運用に問題を抱え、頓挫したり社員への負荷が高い状態で炎上したり、PV稼ぎのためにバズワードを取り上げるばかりにブランド力を損なったりしている現状もあります。

このドキュメントは、テックブログを狙ったターゲットに対していかに自社のテックブランドを届け、社内で負荷を高めることなく社員の協力を得ながら運用していくかということをテーマにした内容になります。

テックブログで目指す姿を定める

テックブログは主目標としてはエンジニア採用が大体を占めます。
ついで、企業の開発組織の認知度向上や、企業の技術力のPR(技術ブランディング)が目標として定められます。
全体を通して「企業プレゼンスの向上」と「採用の最適化」が貢献の軸になります。
このため、テックブログとして目指すべき姿は、「自分たちが何者で、何を目指す集団で、どのようなことを重視しているチームか」を多方面から示していくことになります。

ここでいう多方面は、記事の性格を指します。
開発組織の体制の紹介や、オフでの交流、基盤システムを支えるバックアップ部隊やプロジェクトマネジメント、技術の選定やトラブル対応の方法など様々な性格の記事を掲載するということを指しているとイメージしてください。
「テックブログを通じてどのような状態が確立されたか」を意識して定めると良いです。

これが「テックブログがこうなる」と定めてしまうと、メディアを育てる方向性になってしまい、本来テックブログが果たすべき姿からズレてしまう恐れがあります。

 

テックブログの目標を定める

上記の姿となったと言える状態がどのような状態を指すかが、目標に定められます。
UU数やPV数はその状態を示す上での参考値として考えます。
「◯◯PVを達成したら、この層にまでリーチしたと考えられる。つまりターゲット層の◯割には認知されたと言える状態である」
と証明できるなら、PV数を論拠に定めることはありますが、PVを目標とすると「何をやってもいいからPVを稼ぎさえすれば良い」という考えがあとで生まれてきます。

特に担当者が変更になったり、運用が数年たってくるとこの状態に陥ることがあります。
あくまで、目指す姿に向かっていると示せるマイルストーンを目標に定めるように注意します。

テックブログを書くことをゴールにしない

記事を執筆する社員にとって「記事が公開されたこと」がゴールにならないようにします。
これは運営サイドにとっても同様です。
「テックブログの記事が伸びること=認知度の向上」に繋がります。これは採用戦略やブランディングに寄与していると証明できます。しかし一方で「認知度の向上=記事が伸びる」だけではないことも認識した上でテックブログの運用目標を定めていきます。
即ち、「公開された記事がどのように活用されていくか」を想定した広報プランを立てます。

  • 外部セミナーで発表するプレゼンの資料として記事を活用する
    • セミナー参加者へのリーチ
  • 複数の記事をシリーズとして連載し、テック系メディアや自社メディアに掲載する
    • メディア読者層へのリーチ
  • 対談記事の企画を立て、テックブログの記事をテーマに拡散させていく
    • 対談系を好んで見る人など
  • オンラインウェビナーを自社で開催し、テックブログで紹介した記事のテーマを取り扱う
    • ウェビナー参加者へのリーチ
  • Podcast など音声配信でテックブログの記事の振り返り回などを発信する
    • 作業用BGMとしてラジオやPodcastを聞く層へのリーチ

結果的に、テックブログの宣伝になるのでユーザーを集めやすくなりますが、記事を書いた人にとっては「書いて終わり」にならないことがモチベーションの向上に繋がっていきます。

またエンジニアのポートフォリオの材料としてテックブログを活用してもらったり、タレントマネジメントの材料としても活用できると尚良いと思います。

運用する上での NG 事項

テックブログを運用する上で重要なことは、継続することです。
発信し続けることで自分たちがどこに強く、何を目指し、どういう性格を持っているかを伝えていくことができます。1つの記事より継続したブログが重要となります。
これを実現させるためにもしてはならないNG行為があります。

  • 基本的なモチベーション設計がなされていない状態で、記事を書くことに対するインセンティブを発生させてしまうこと
    • 安直な施策と思われてしまうと執筆を断る、または遅延を繰り返すことに繋がってしまいます。
  • 評価に繋がらない状態で運用を強行すること
    • 上記と類似しますが、基本的な設計部分に評価が含まれていないと、テックブログ記事の執筆は「負担」でしかありません。
      また、罰則形式で運用をしてしまうと「評価はされないが、協力しなかったらマイナス評価を受ける」という害悪な存在として認識されてしまいます。
    • あくまでプラスな活動であると周囲が認識してくれるよう、どのように評価され、またテックブログに「利用価値がある」と認識してもらえるかが基本的なモチベーション設計に必要となります。
  • 執筆にかかる工数のマネジメントをしないこと
    • テックブログ記事は炎上対策やマサカリ対策のために、調査や執筆に大変な工数がかかります。丸投げすると「運営サイドが非協力的なのに強要してくる」と思われてしまうので、必ず工数削減できるサポートを用意します
  • フィードバックがなされないこと
    • これは運営と執筆者のコミュニケーションがなされていないことになります。書いたあとのフィードバック(アンケートや運用サポートに関する感想など)を相互に行うことで会話が成立して次回への依頼を容易にしていく働きがあります。

まとめ

テックブログは今や標準といって良いほど各企業で導入されていますが、継続となると四苦八苦するケースがあると思います。

テックブログの継続が途絶えるシチュエーションとして、プロジェクトが多忙になりスケジュールが押している時や事業部全体のコストカットにより開発部門の稼働率管理が厳密化した時などが代表的な例となります。そういった事態にいざ遭遇した時に備えていかに低コストで負荷なく運用できるかといったことを意識して運営すると良いかもしれません。

また、執筆していくエンジニア各々が自分たちのビジョンの達成を意識しこれを発信していきたいと感じる環境、文化を形成していくことで忙しい合間に考えを整理する意味合いで情報発信する場としてテックブログが機能すると理想的だと考えます。

 

テックブログを運用している皆さんの一助になれば幸いです。